障害者差別解消法ってどんな内容?障害に関わる全ての人にマストな知識!
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障害者差別解消法ってどんな内容?障害に関わる全ての人にマストな知識!
こんにちは。心理士のなぎさです。
2016年4月1日より障害者差別解消法が試行されました!「え?なにそれ知らない!」「言葉としては聞いたことあるけど、どんな法律なの?」と思ってらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これまでわたしの勤めていた教育現場では、個々の障害に必要な配慮や工夫をすべき場面で、適切に対応されていない場面をたくさん見てきました。
簡単な工夫をすれば楽しく学校生活が送れる生徒がいるのに、今までの慣習や周囲の無理解でそれが阻害されてしまう。心理士として、悔しい気持ちになったこともありました。
しかし、障害者差別解消法が施行されたことで、今後教育現場の常識が大きく変わり、教育現場の限界が広がっていく可能性をとても強く感じています。
こちらのページでは、障害者差別解消法について簡単に説明します。
障害に対する的確な理解と適切な配慮を求める上で、わたしたちがまず障害者差別解消法について正確な知識を持つことが必要になってくると思います。一緒に勉強していきましょう!
障害者差別解消法って一体なに?
障害者差別解消法のポイントは大きく2つあります。
①不当な差別的取扱いの禁止
国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障害のある人に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止しています。
②合理的配慮の不提供の禁止
国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者に対して、障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者に対しては、対応に努めること)を求めています。
障害者差別解消法をもうちょっと詳しく
不当な差別的取扱いとは?
「障害がある」という理由だけで不当に差別されることです。
- 「障害がある」という理由だけでスポーツクラブに入れないこと
- アパートを貸してもらえないこと
- 車いすだからといってお店に入れないこと
合理的配慮とは?
障害のある人が困っている時にその人の障害にあった必要な工夫ややり方を相手に伝えて、それを相手にしてもらうことを合理的配慮といいます。
こんなのはだめ
- 聴覚障害のある人に声こえだけで話すこと
- 視覚障害のある人に書類を渡すだけで読みあげないこと
- 知的障害のある人にわかりやすく説明しないこと
→障害のない人にはきちんと情報を伝えているのに、 障害のある人には情報を伝えないことになります。
合理的配慮の内容はどうやって決める?
では、合理的配慮をどのように求めればいいのか、合理的配慮の内容はどうやって決めるべきか少し考えてみましょう。
ケイシー・マーティン裁判にみる合理的配慮の考え方
アメリカのプロゴルファーのケイシー・マーティンは足に障害があり歩行が困難でした。ゴルフコースを歩くと足に痛みがはしります。長距離のコースを歩くことで、出血や骨折の危険性もありました。
そのため、マーティンはプロゴルフ協会に、コース移動の際にカートを使用したいと申し出ました。しかし、ゴルフ協会はその申し出を拒否。そのため、マーティンは裁判をおこしました。
ゴルフ協会の主張
コースを歩くことは、プロゴルファーの本質的職務に含まれる。障害を理由にゴルフカートの使用を認めることはゴルフの本質を変えることになる。
マーティンの主張
プロゴルファーという仕事に必要な能力にコースの歩行は含まれていない。ゴルフ協会の規則はアメリカの障害者差別禁止法に違反している。
アメリカの障害者差別禁止法とは
アメリカの障害者差別禁止法では、労働者が職務に必要な能力を有している場合、障害により職務と直接関係のない周辺的な作業ができないとしても、雇用を拒否してはいけないという決まりがあります。
使用者はどの労働者も働きやすい環境にするために合理的配慮を求められます。使用者はあらかじめ環境調整をするなど、障害者を受け入れやすい体制を整えておく必要があります。
ここでの争点は、
- コースを歩くことはプロゴルファーの本質的職務なのか
- ゴルフ協会はマーティンに対して合理的配慮をする必要があるのか
ということです。
裁判では、さまざまなプロゴルファーが「ゴルフとは何か」というゴルフの本質について証言しました。そうして、プロゴルファーの本質的職務について検証していきました(結果は、マーティンの勝利)。
活動の「本質」を合理的配慮の軸にする
マーティンの裁判から分かるのは、活動の「本質とは何か」について考えることが、合理的配慮を検討する上で重要なポイントになるということです。
これは、教育現場も例外ではありません。
「書く」ことが苦手なAくんの場合
小学校3年生のAくんは、学習障害により文字の形を認識することが難しく、板書をするのがとても苦痛です。そのため、板書にかなりの時間がかかってしまい、授業の理解が遅れています。
そのせいで「授業についていけない」「学校に行くのが嫌になってきた」と登校をしぶることが多くなってきました。
この場合、「授業内容を理解すること」が本質であるとすれば、板書は「授業内容を理解すること」に必須ではありません。代わりにAくんに適した学習の方法を考えることが可能です。
そこで話し合った結果、
黒板を撮影することで、Aくんが授業の理解に集中しやすくなるのでは?
という提案が出てきました。
板書の負担を減らせば、Aくんは授業の理解に集中することができます。また、授業に自信をもって参加できる機会が増えることで、登校意欲を取り戻すことができるかもしれません。
Aくんが「授業を理解する」ために、Aくんに適した「黒板を撮影する」という方法を認め、周囲も理解すること。
それが、合理的配慮であると言えます。
これまでは、黒板の撮影を担任の先生に提案しても、「他の生徒がまねするから」「他の生徒に説明できないから」という理由で快く受け入れてもらえないということもありました。
しかし、「活動の本質は何か」「配慮をすることで活動の本質を損なってしまうのか」を話し合いの焦点にすることで、納得してもらえることもあるかもしれません。
学校側の負担とのバランスを考える
「黒板を撮影すること」は比較的簡単に行える配慮です。しかし、合理的配慮を行いたい場合でも、人手や時間、設備が不十分な場合もあります。
実際にある資源の中で現実的に行える配慮について、保護者も学校も、もちろんこども自身もアイディアを出し合っていく必要があります。
おわりに
発達障害は身体的な障害と比べて目に見えにくく、周囲の理解を得られにくい場合が多くあります。
しかし、教育現場では、障害をもつ人の生活のしづらさや悩みをしっかりと理解し、適切な合理的配慮をしていくことが法律によって義務化されました。
活動の「本質とは何か」を考えた上で、本質に至るまでの手段や道具は柔軟に変更される必要があります。
このことを心に留めて、こどもたちみんなが笑顔で過ごせる環境をつくっていきたいですね。