1歳半健診で「言葉が遅い」と言われました。家庭ではどんなことに注意する?
1歳半健診で、「言葉が遅い」と指摘されて、暗い気持ちで健診会場を後にしたことはありませんか?
健診では、「まだ個人差が大きい時期なので、しばらく様子をみましょう」と言われることもありますが、「じゃあ、どんなポイントに気をつけて様子を見ればいいの?」と不安になることもありますよね。
こちらの記事では、
- 1歳半ごろの言葉の発達の目安と個人差について
- 1歳半健診以後、子どもの言葉の発達の様子を見守るときのポイント
- 心理士などの専門家に相談に行く際の目安
について、育児支援の場で親御さんたちにお伝えしていることをご紹介しようと思います。
1歳半ごろの言葉の発達の目安は?「個人差」は大きい?
1歳半ごろでは、「身近な単語を3〜5個言える」というのが一応の発達の目安です。
でも、1〜3歳ごろのお子さんの言葉の発達は、個人差が大きいもの。
1歳半で、「イヌ、キタヨ」「アッチ、イキタイ」など、大人と会話ができるようになるお子さんもいれば、「まだ何の単語も話さない」というお子さんもいます。そんな風に、1歳半の時点で差があったとしても、幼稚園に入園するころ、小学校に入学するころには、その差が目立たなくなってくることがほとんどです。
だから、「発達の目安」にとらわれて、それより遅いからといって不安になることはないんです。
私の子も、長女と長男の言葉の発達は、まるっきり違いました。
長女は1歳手前くらいから「パパ」「ママ」などの単語を言うようになり、1歳半では「ゴハン、タベル」など自分の意志を言葉で示すことができていたので、言葉の発達が標準よりはやいタイプだったと思います。
反対に、長男は2歳ごろになっても「ママ」「ナイ(物がない)」「パン」などの単語を数語言えるのみという言葉の発達が標準よりゆっくりなタイプでした。
「発達の目安って、言葉の発達がすっごくはやい子からゆっくりな子の平均をとったものだから、半分の子は平均よりゆっくりなんですよ。だから標準よりできてないな、と感じても焦ることはないですよ」
育児相談では、保護者の方にいつもこういう声かけをしています。長男の言葉が伸びなかった時期は、私自身も少し焦った気持ちになりましたが、このフレーズを自分に言い聞かせました。
子どもの言葉の発達の様子を見守るときのポイントとは?
とは言っても、1歳半健診で「我が子の言葉が遅れているかも」と感じた時に、ただ時間が過ぎるのを待つだけではソワソワしてしまいますよね。
たいていの場合は、1歳半で言葉の発達がゆっくりでも、年齢が上がるに連れて言葉のはやい子に追いついていきます。
でも、中には次のようなことが見られる場合もあります。
- こちらの言っていることが分かっていない
- 周囲の声かけや働きかけに対して反応が弱い
- すごく落ち着きがない。じっとすることが難しい
こういう場合には、お子さんの様子を家庭でも少し注意して見ていく必要があります。「ちょっと心配なところがあるな」「引っかかるポイントがあるな」と思えば、以後の記事も読み進めてください。
逆に、「何となく大丈夫かも^^」と思えれば、言葉の発達がゆっくりしているだけ、ということです。時期がくれば、言葉は自然と伸びていくので、どっしりと構えていてほしいと思います。
1)こちらの言っていることが分かっていない(言葉を理解していない)
言葉を言えないだけでなく、言葉を理解していない、と感じる場合もあります。
「ボールを箱に入れよう」「オムツとってきて」などの簡単な指示の理解が難しい場合など、日常生活の中で「あれ?大人の言っていることが理解できていないかも」と思うことがあることもあるかもしれません。下のような簡単な指示が理解できるか、時間のあるときにチェックしてみましょう。
- 「〜持ってきて」と言ったときに指示通りのものを持ってくる
- 「パパどこ?」と聞くとお父さんの方をみる
- 「お出かけするよ」と言うと靴をはこうとする
ポイントは、いつもとは違う環境の中でチェックすること。
家庭の中では、毎日同じ環境で生活しているため、いつもの習慣や雰囲気でお母さんの言っていることを察することができます。この場合、言葉の意味自体が分かっていなくても、親御さんの指示に従うことができてしまうのです。
たとえば、家の中でお母さんが買い物バッグを持って子どもに「でかけるよ」と声をかけたとします。その場合、子どもがスムーズに玄関に行って靴をはいたとしても、お母さんの「でかけるよ」という声かけに反応したのか、お母さんが買い物バッグを持ったことで「外に出る」と分かったのか判断が難しいのです。
そのため、家の外など、いつもと違う環境になったときに、本当に「言葉」が理解できているのかをチェックすることが大切です。公園に行ったときに「ゴミ箱にごみを捨ててきてね」などの簡単な指示を出して確認してみてください。
ものの名前をどのくらい知っているか
そもそも「ものの名前」を知らないと指示に従うことが難しいので、どのくらいものの名前を知っているかを確認することも大事です。
- 犬(ワンワン)
- 車(ブーブー)
- りんご
- おもちゃ
など、身近なものをどのくらい知っているか確認してみましょう。
絵本を読みながら、「ワンワンはどれかな?」とさりげなく聞いてみたり、物を机の上に並べて「りんごとってきて」とお願いすることで確認できます。
「チェックするぞ!」と大人が意気込んでしまうと、お子さんも構えてしまうかもしれないので、あくまでも日常生活の中でさらっとやってみるのがおすすめです。
なぎさ
専門家に相談する目安
5〜6ヶ月経っても、簡単な指示を理解していない、知っている言葉が増えない、と感じるようであれば専門家に相談してみましょう。
1歳半健診を受けた保健センターでは、無料で相談を受けることができます。電話をするか窓口に訪問するか、どちらでも大丈夫です。保健師さんに相談することで、心理士や言語聴覚士などの専門家につながることもでき、今後の対応を考えることができます。
2)周囲の声かけや働きかけに対して反応が弱い
- 声かけしても反応がない(名前を呼んでも振り向かない)
- アイコンタクトがとれない
- おもちゃでの遊びや新しい遊びを提案しても、全く興味を示さない
- 遊び方が独特・本来のおもちゃの使い方で遊ばない
- 人と一緒に遊ぶことに興味がない
など、周囲の声かけや働きかけに対して反応が弱い場合もあります。
声かけしても反応がない場合は、「どのくらい音が聞こえているか」ということにも注意する必要があります。呼びかけ以外の音でいいので、いろんな音に反応するか、確認してみましょう。
専門家に相談する目安
上記のような傾向が複数当てはまり、それが5〜6ヶ月続くようであれば、専門家に相談してみましょう。
1歳半健診を受けた保健センターでは、無料で相談を受けることができます。電話をするか窓口に訪問するか、どちらでも大丈夫です。保健師さんに相談することで、心理士や言語聴覚士などの専門家につながることもでき、今後の対応を考えることができます。
3)すごく落ち着きがない。じっとすることが難しい
そもそも、1〜2歳くらいの子どもは活発で、落ち着きがないのが当たり前です。ですが、同じくらいの年齢の子と比べても、エネルギッシュに動き回ってしまい、常に落ち着かないという子もいます。そういう場合は、注意深くようすを見ていく必要があるかもしれません。
「同じくらいの年齢の子がどの程度動き回るのかわからない」という場合は、近所の子育て支援センターや公園など、同じ年齢の子どもが多くいる場所に出かけてみてもいいかもしれません。地域によっては、リトミックやお話会など、同じくらいの年齢の子が集団で参加できる場もあります。
見えたものにすぐに反応してしまう
1~2歳ごろの低年齢のうちは、一つのおもちゃでじっくり遊ぶことは少ないもの。あるおもちゃで遊んでいたけど、数分間遊んで飽きたので、別のおもちゃにうつる、などのことはよくあります。
一方で、目に見えたものに反応してしまいやすく、注意の移り変わりがスピーディーな子もいます。
- 気になるものが見えると、自分がどんな活動をしていても急にそちらの方へ行こうとする
- 車のおもちゃで遊ぼうと思っておもちゃを出したのに、それで遊ぶ前にふと目に入った別のおもちゃが気になって、そちらに気持ちが向かってしまう
- すべり台をすべっている途中で、視線はすでに別の遊具にいっていて、滑り終わった途端にそちらへ向かう
など、活動にまとまりがなく、注意がうつりかわりやすい場合もあるので、注意深くようすを見ていきましょう。活動と活動の間に「間」があるか、何かの活動の途中で気持ちが他のものにうつっていないか、じっくり観察する
専門家に相談する目安
お子さんの落ち着きのなさ、注意の移り変わりやすさなどが顕著に気になるようであれば、専門家に相談してみましょう。
1歳半健診を受けた保健センターでは、無料で相談を受けることができます。電話をするか窓口に訪問するか、どちらでも大丈夫です。保健師さんに相談することで、心理士や言語聴覚士などの専門家につながることもでき、今後の対応を考えることができます。
さいごに
こちらには、専門家に相談する目安を書きましたが、気になることがあれば1歳半健診を受けた地域の保健センターにいつでも相談してみてください。地域によっては、専門家の相談予約をとるのに時間がかかる場合がありますが、保健師さんにはいつでも相談できます。
私自身も、オンラインの育児相談を受けています。オンラインのテレビ電話での相談ですので、ご家庭で好きな時間に相談を受けることができますが、有料での相談とさせていただいています(ご予約はこちらから)。
こちらの記事で参考にした書籍
さいごに、おすすめ書籍を紹介します。
言語聴覚士の中川信子先生の著書です。中川先生の著書はどれも分かりやすく温かいですが、こちらの本は全く専門知識がなくても読みやすく、言葉の発達に大切なエッセンスがギュッと詰められています。